次のセカイの誕生日

母の実家が世田谷の弦巻にあり、
父と母は結婚当初から私が産まれるまでは、そこに住んでいたらしいのだけど、
私が産まれてからほどなくして、神奈川県の港北あたりの一軒家に引っ越している。
 
つい先日、なぜその場所だったのかと母に聞いてみたが、
さほど大きな理由もなく、「そこにちょうどよい家があったから」と言っていた。
私の現世での記憶は、そのちょうどよい家からはじまる。
 
共働き家庭だったから、祖母と過ごすことが多かったはずなのに、
父が運転するバイクに乗せてもらって山を駆け巡ったことや、
車に乗り込んで運転ごっこをしたり、
車関連の会社に勤めていた父の勤め先のショールームで遊んだりと
私の中に残されたその頃の記憶は父との思い出ばかりだ。
 
歌が好きになったのも、カラオケ好きだった父の影響が大きい。
2人でいるときに私が歌うと「ここの伸びが甘い」だの、
音程がいまいちだな」だの、逐一評価をしてくるが、
人前で歌った時は「オレの娘は歌が上手いだろう?」
と、自慢げに言い回っていた。
まぁ、そのあとにいつも「オレの娘だからな」
が、つくわけだけど(笑)
 
老後、足を悪くする前までは、カラオケスナックのマスターをしていたし、
パソコンを買った時の一番最初のお願いが「カラオケの登録して」だったし、
病院で入院してたときも歌って、
みんなに「いい声だね」って言われて嬉しそうに笑ってた。
 
そうだ。来世は歌手を目指してみたらどう?
私の記憶の中でも歌ってる声が今日も聴こえるよ。
いい声だね、おとうさん。